理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性

ISBN:9784062879484
新書というものは当たり外れが大きい。『バカの壁』以降雨後の竹の子のようにあらわれた新書は、かつてのビジネス系文庫のように、実用性には富むが実証性は非常にあやしいものばかりであった。具体的にいうと、その業界で成功した人の自伝などがあげられる。そのようなものは、確かに一部の方々には有用かも知れない。しかしながら、体験記が万人に通用する道理などない。新書は少しでも万人に向けて書かれるべきではないだろうか。
さて、この新書ではアローの不可能性定理、ハイゼンベルク不確定性原理ゲーデル不完全性定理についてざっくりと解説している。解説の仕方も、会談形式となっているので、多少わかりやすいであろう。ウィキペディアで調べてもわからなかった方は、買うべきである。
なぜならばこれらの定理は、我々が自明としていること―多数決原理の完全性等―を否定しうるからである。
しかしながら、新書の宿命すなわち"学問的厳密性に欠けること"には目をつむっていただきたい。1000円にも満たない書物の分量で3つのテーマを扱うのにはムリがあるし、我々のような門外漢に対して説明する文書である。厳密性なんて言い出したら、新書の存在意義がなくなってしまう。我々が心がけるべき事は、書を猛進しないということである。