「強烈なネタバレ」葉桜が来た夏

強烈なネタバレです。
読了語勢いで書いた文章です。明らかな誤読が多いですが、あえてそのままのせます。
ISBN:9784048670212

あらすじ

女性だけで構成される異星人が日本に降りてきた
BLUE DROP

口絵

異星人の最高評議会議長の言葉

「だからこそ、彼らには楽しむ権利があるのです。いずれ来たる幼年期の終わりのために」

ちょっとそのネタはヤバくないか

詳細

200X年4月18日謎の飛行物体が東京に向かって墜落。米軍が核兵器で対抗したものの、破壊に失敗。軌道を変えて琵琶湖に墜落した。飛行物体に乗っていた異星人―アポストリ―は自衛隊と戦闘状態に陥る。科学力と身体能力に劣る人類は劣勢となった。日本中が焦土となった。しばらくして人類は彼女らの弱点を知った。銀である。銀製の武器で反抗した人類は、ついに彼女らを琵琶湖畔まで追い詰めた。講和が成立した。
彼女らの目的は遺伝子であった。彼女らは他種族の血を吸うことで繁殖し同時に生存する。彼女らの技術を欲した日本は彼女らに定住地を与えた。

  • 彦根市彦根居住区とし、アポストリと人類はそこで共存する
  • アポストリは人類一名の血を吸う権利を有し、彼もしくは彼女を護衛する義務を負う(共棲)
  • 人類は彦根居住区に銀製品を持ち込まない
  • アポストリは日本政府に技術協力をする
  • 彦根居住区の人類はアポストリと共棲する限りにおいて、様々な特権を持つ
  • 彦根居住区の住民が居住区外に出るためには複雑な手続きを要する

戦後19年、人類側の代表、南方大使の息子、学は苦境に立たされていた。彼は居住区外の大学に進学をのぞんでいたが、父は許さなかった。彼の父はアポストリ側の代表の姪と息子を共棲させようとした。というか親権を用いて無理矢理共棲させた。
*1

登場人物(意図的に端役を記述し、要人を省略)

南方学:戦後生まれ。妹と母をアポストリ過激派に殺される。その事実を実の父に握りつぶされる。おかげで父とアポストリという種族自体を嫌っている。
アポストリの暗殺者:講和条約を否定し、南方大使を暗殺しようとしている。
南方大使:講和条約の立役者。動機はアポストリと恋仲になったから。
葉桜:最高評議会議長の姪。家族を人類に殺されたが、両種族の共生を願う。南方学と共棲する。
歴史の先生:反アポストリ派。彦根居住区の解放を主張。当然周囲からはにらまれている。

葉桜以外外道だらけです。
ちなみに
反アポストリ派:バックには国連がいる。日本の軍事的成長を危惧している。
彦根居住区の人類:出世のために共棲する者、アポストリを下僕のように使う者が多数。
日本:アポストリの技術力で世界の覇権を握った。新エネルギーの開発で、産油国を衰退に導いた。
アポストリ:無断で地球に立ち入った。ターンAのムーンレイスの方が遥かにマトモだ。

感想

やっぱり外道だらけですね。

そして、お約束のように学は葉桜に感化されて憎しみの心を捨てるわけです。

普通の方はここでめでたしめでたしと感じるわけですが、俺にしては「ふざけるな!」と思ったわけです。
結局ふたりとも父に利用されているんですよね。その父は、種族をこえた「愛情」が行動原理なわけです。別に途上国が貧困に陥ろうが、世界に脅威を与えようが、日本国内に階級を作ろうが、人権を破ろうが、殺人事件をもみ消そうがお構いなしなんです。まぁ、学が敵討ちしようが、アポストリを根絶やしにしようが、結局どのルートに進もうとも外道なわけだけれども「愛」のひとことで美化するのが薄気味悪い*2
多分、彦根居住区には『Finlandia』ではなく『愛・おぼえていますか』が流れているのでしょう。

とある方は、「なぜ学はアポストリ全体を嫌うのか?」と仰ってましたが、俺としては、「なぜ、母と妹の仇をとらないのか?何故転向したのか?」が疑問に思います。

しかしながら作品の出来と、話に共感できるかはべつの話です。
ここまで心を動かした作品は久しぶりです。
ここまでDisったのは「ミミズクと夜の王」以来です。
アレはロリ系(ペドに近いかも)のヒロインにむかついただけですが。
同様に久住作品も『ミステリクロノ』より『トリックスターズ』の方が好きです。
だから、Airでもうまく感情移入できなかったんだよなぁ。


閑話休題心を動かす作品に出会えて幸せでした。勢いに任せて感想を書いた作品は久しぶりです。心を動かさずして何が小説でしょう。たとえそれが負の感情であっても、その感情を与えた作品は至高の位に叙されるべきです。シナリオに共感できなかったのは、俺が『水滸伝』や『魔笛』が嫌いな理由と同じなのでしょう。

*1:この世界には自衛隊はあるが人権はないらしい。息子が成人しても共棲を解くことは性質上できないのに

*2:少なくとも俺はそう読んだ