『化物語』

化物語上』ISBN:4062836025
化物語下』ISBN:4062836076

西尾節本領発揮

西尾維新氏の作品はライトノベルかどうか議論が分かれるところですが、コアなライトノベル読者と層がかぶるので、あえてライトノベルと定義しました。
さて、この作品のストーリーですが、要約すると

「憑きものにとりつかれた少女を主人公が助ける」×5

です。
しかし、この作品の魅力はそこではありません。
ヒロインの立板に水のボケ、それに対する主人公のツッコミこそが一番大切なものなのです。
例えば

「(前略)お前に慈悲はないのかよ」
「慈非ならあるわよ」
「心がねえ!」

上巻より
こんな感じの会話が本筋を無視して続いていく作品です。
上下巻合わせて3100円と非常に高価で、箱入りのため立ち読みもしずらくなっておりますが、同氏の『クビシメロマンチスト』が好きな方は迷わず買いです。

読者にとってはどうでもいいことだけれども

で、誤解を恐れずに言えば、この『化物語』は百パーセント趣味で書かれた小説です。仕事的要素は微塵もありません。元々ぱっかり空いたスケジュールを埋めるために手遊びで書いた小説なので、こうして発表していいものなのか、正直迷いがあります。

下巻「あとがき」より

ところでこの本は『GOSICK』三巻を書いたあと突然書きたくなり、割と一瞬で書き上げてしまって(後略)

『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』桜庭一樹/富士見ミステリー文庫あとがきより


どちらもファンの間では評価の高い作品です。こうしてみると、勢いで書いた作品でも面白いものは面白いのでしょう。粗製濫造批判は成り立たないのかもしれません。