もしもラインハルトとヤン・ウェンリーが同じ軍隊にいたら

『神無き世界の英雄伝2』ISBN:9784840240338

電撃文庫久方ぶりのスペースオペラ

サブタイトルの通り、ここ数年電撃文庫ではスペオペが出ていなかったように思える。というか、ライトノベル業界全体にも当てはまりそうな気がする。そのような中で新人がスペースオペラを書いたのである!否が応でも期待せざるを得ない。

前回までのあらすじ

「電子妖精」が戦艦の"主"を選ぶ時代、人民共和国では新たな提督が2人決まろうとしていた。
ひとりはロイ・クローバー。大企業の御曹司である。
もうひとりはレン・エバンズ。一介のコックである。


時を同じくして、「企業連盟」を名乗る民間企業群が共和国からの独立を宣言。ロイとレンも彼らと合流した。
彼らの活躍によって企業連盟は独立を勝ち得たのである。

いかにして「天才」をみせるか

はっきり言って、同じ陣営に「天才」を二人も入れると話の構成が難しくなる。
敵方が「かませ犬」になってしまうからである。
ではどうすればいいのであろう。

  • 主人公側上層部を「馬鹿」にする
  • 敵方も「天才」ばかりにする

後者の手段は所謂「インフレ」が発生してしまう。その点前者は、有効な策だろう。特に『岳飛*1』などでも用いられている。これの欠点は、主人公をトップに据えることはできないということか。
とにかく「負ける」要素を持ち込まないと、話は面白くならないのだろう。
今回はそれが現れた巻である。
それも、「主人公の有能さ」を示しながら負けた話である。
これからの話にも期待していきたいと思う。

*1:現実派の秦檜を冷酷な人物として描くことで悲劇性が増した。