ポスト『半月』その一

つきこい ISBN:9784840240673

果たしてこれが電撃で受けるのか

山科千晶氏久しぶりの新作。
とはいえ、ほとんどが電撃hpで掲載された作品の再掲載です。
私が彼女の小説を読むのは初めてなのですが、最近のライトノベルの主流ではないタイプの作品でした。
なんというか、ガチの恋愛小説です。
連作短編形式になっていて、舞台は現代の渋谷です。

短編

<モーニング・ムーン>
別々の短編<つきこい><月下少年>をつなぐために新しく書かれた短編。
トルストイの『光あるうちに光の中を歩め』における、<暇人たちの会話>に相当する部分です*1


<月下少年>
渋谷でバンドをやっている学生が主人公。
ファンタジー的要素が全くありません。


<つきこい>
渋谷の予備校に通っている女子高校生が主人公。
結末がファンタジー的です。


このように構成も凝っていて、リアルとフィクションの境界に挑戦している作品です。

イラスト

高野音彦
リバーズ・エンド』のイラストが印象に残っています。
この方の絵は現代のライトノベルにありがちな「ギャルゲ−絵」「アニメ絵」ではないです*2。現在ではまれなタッチなので、絵師買いもありかもしれません。渋谷の街並の描写も素晴しいです。

*1:とはいえ、『光(略)』は本編が結局ひとつになってしまったので余り意味をなさないが

*2:完璧俺の印象論です