DOORS2

ISBN:9784044146191

娯楽にメッセージ性を求めてはいけない

Door2は前作のDoorsと同様に特定のジャンルに対する皮肉や、平凡であることの大切さ、「真実を知ることよりも、現状を維持したい」という人間の執着心をテーマとして読むことも出来ます。でも、そのようなことをこの作品に求めるべきなのかということに対しては大きな疑問を抱きます。正直な話娯楽小説に文学性を求めるのはナンセンスな感じがするのですよ*1。ある娯楽小説に対してSF性や文学性が論じられているという時点で、少なくともその作品は娯楽性を満たしていなければならないと私は考えます。どんなにつまらない小説でもそこにテーマを見いだすことは可能です。保証します。だから、この小説も娯楽性を満たしているかどうかではんだんすべきであって、「テーマが薄っぺらい」という批判は二の次三の次にすべきです。少なくとも私には冒頭に挙げたテーマ性が薄っぺらいかどうか判断できるだけの見識を持っていません。

きっぱりとやめる潔さ

この作品は、「沢山ある異世界と現世界の要素が混合しあったのでそれを修復する」というストーリーの元で描かれています。詰まるところ、いくらでも異世界を登場させることが出来るので、いつまでも続けることが出来るのです。それをあえて短編9話で終らせたことに脱帽です。それぞれの世界に関して、長編1本ずつ書けるのにもかかわらず、それを短編集にして、たったの2冊にまとめたことは賞賛に値します*2

*1:例えば「ハルヒSF論争」

*2:なんだかエラソウダ